LTE通信機能搭載ドローンとして国内初、一度に複数の砂防ダム点検を実施
~「エアロボウイング」が、DXによる安全で効率的な山間調査に貢献~
エアロセンス株式会社(所在地:東京都文京区、代表取締役社長:佐部浩太郎、以下、エアロセンス)と株式会社建設技術研究所(所在地:東京都中央区、代表取締役社長:中村哲己)は、エアロセンスで開発・設計・製造・販売を一貫して行っている垂直離着型固定翼ドローン(VTOL:Vertical Take-Off and Landing Aircraft)「エアロボウイング(Aerobo Wing)」を使用し、8基の砂防ダム(※1)を一度に点検する実証実験を、LTE通信機能を搭載したドローンとして国内で初めて(※2)実施しました。
従来は、山奥にある砂防ダムの点検には人が現地に足を運んで確認していました。しかし近年は、労働人口の高齢化の一方、異常気象に伴う災害の増加により、人が現地に行かなくても済む安全で効率的な点検が求められています。
LTE通信機能を搭載したエアロボウイングの使用により、人による現地点検が不要になるだけでなく、麓などの安全な場所から離着陸して広範囲に点在する砂防ダムを一度に確認することも可能になりました。今回の点検箇所に人が立ち入る場合、通常は1~2日かかります。本機を使用することで、現地立ち入りが不要であることに加え、その飛行時間が10分以下であるため、点検時間の大幅な短縮も実現しました。本機を利用した山間調査のDX(デジタルトランスフォーメーション)は、定期点検よる災害予防、および砂防ダムへの人の立ち入りが困難となる災害直後の緊急調査などでの活用も期待されています。
※1:水ではなく土や砂、石等を人工的にせき止め、土砂災害を防ぐダム。
※2:2022年3月、エアロセンス調べによる。
図1:今回行われた実証実験における点検対象の砂防ダム(砂防堰堤)と飛行ルート概要
エアロボウイング(Aerobo Wing)の特長
- 最大時速100km、最大航続距離50km、100haの広域も1回で飛行・撮影が可能
- 高低差がある山間部でも、旋回飛行により使用電力を抑えて上昇・下降が可能
- LTE通信や高出力無線にも対応可能で、見通しのない山間部や広範囲も飛行可能
【エアロボウイングの特長】
一般的に、砂防ダムは山奥の広範囲に転々と存在する上、山間部では飛行経路の高低差が大きいことが多く、マルチコプター型ドローンではバッテリーを多く消耗してしまいます。そのため、離着陸を砂防ダム1基ごとに繰り返す必要がありました。
VTOL型ドローンのエアロボウイングは、最大時速100km・最大航続距離50kmという特長により広域調査が可能です。加えて、経路上に高度差のある場所でも、水平飛行に移行したのち旋回上昇・旋回下降を利用することで、マルチコプター型ドローンと比べて使用電力を大幅に抑えることができます。また、離着陸時は垂直飛行となるため、単純な固定翼ドローンでは困難な狭い場所からの離着陸も可能です。一方、山間部での広範囲な飛行では、山奥までの見通しのない飛行経路となり、離発着場所にあるドローン操作端末と本機の間の通信が他の山に遮断され、飛行制御や映像伝送ができなくなってしまうことが課題でした。
今回、エアロボウイングにLTE通信機能を搭載することにより、山間部でも通信が遮られずに安全な飛行・砂防ダムの点検を実現しました。また、ドローン写真測量として定量的な三次元データも得られるため、1フライトで複数の砂防ダムの土砂堆積割合の正確な数値を出すことができます。
【実証実験の概要】
2021年12月10日、国土交通省東北地方整備局管理下の福島県にある吾妻山の中腹において、実施しました。エアロボウイングを次のように飛行させて、砂防ダムの点検を行いました。
<実証実験詳細>
- 飛行概要: 麓近くの荒川遊砂地から離着陸し、8基の砂防ダム上空を飛行し点検
- 飛行のポイント:水平飛行へ移行後も旋回上昇を組み合わせてて適宜高度を上げながら山奥へ飛行し、見通しのない約5kmに渡る折れ曲がった経路沿いに8基の砂防ダムを点検
- 飛行経路: 事前に設定したフライトプランに従って自動飛行
- 砂防ダム確認事項: 砂防ダム内の土砂等の堆積の様子を三次元データで確認
図2:荒川遊砂地から垂直に離陸するエアロボウイング
図3:エアロボウイング水平飛行中に撮影された8基の砂防ダムの画像(上)とその一部拡大(下)
エアロセンスは、LTE通信機能を搭載したエアロボウイングを活用することで、災害の予防や、迅速な復旧支援への貢献を目指します。