【講演会レポート】危機管理産業展2024 代表取締役社長 佐部浩太郎 「災害発生時にドローンを活用するための体制づくり ~能登半島地震での活動からの課題~」(前編)
エアロセンスは、10月9日から11日まで東京ビッグサイトで開催された危機管理産業展に出展。VTOL型ドローンの「エアロボウイング」を展示し、災害時のドローンを活用したソリューションについて紹介しました。
開催期間中の10月10日、会場で代表取締役社長 佐部浩太郎による講演を実施。1月に発生した能登半島地震発生後、災害時のドローン活用について関心が高まる中100名以上の来場者の方々が参加され、熱心に耳を傾けました。その講演内容について2回にわたりご紹介します。
能登半島地震および豪雨の被害調査活動の紹介
セミナー冒頭に、当社が9月の奥能登豪雨災害による被害状況確認支援を行ったことについて説明。当社の顧客である佐藤工業株式会社(以下佐藤工業)が国土交通省から被災現場の復旧活動の要請を受け、当社は佐藤工業から状況確認の支援要請を受け輪島市に向かい、孤立集落につながる土砂崩れにより封鎖された道路の復旧工事を行う目的で、当社のマルチコプター型とVTOL型ドローン2機種を活用し調査を行いました。
現場ではマルチコプター型ドローンで土砂崩れの現場の調査を実施。その後、国道の安全な場所からVTOL型ドローンを飛行させ1回のフライトで広範囲の調査を行い、オルソ画像、三次元点群を作成後、佐藤工業に提出。同社は工事の見積りや復旧工事の発注を行い、復旧活動を開始する予定です。被災後に迅速に対応を行ったことで、早期の復旧を見込んでいます。
今回実施した調査活動では、マルチコプター型のドローンでは1日かかり、危険な現場に繰り返し立ち入る必要がある調査がVTOL型ドローンでは30分で、安全な場所から実施できた。VTOL型ドローンは広範囲の調査に適していることが改めて確認できました。
また、1月の能登半島地震発生後も当社が被害状況の調査を行ったことについて紹介。災害現場でのドローンの活用においてはJUIDA(一般社団法人日本UAS産業振興協議会)が全体の災害支援ニーズを取りまとめ、ドローン各社が支援活動を行いました。
地震発生後、現地では有人機の飛行を優先させるため2週間程度ドローンの利用が禁止されており、当社はドローンの利用が可能になった後、輪島市の道路、珠洲市の港湾などを点検し成果物としてオルソや点群データなどを提供後、復興活動に活用されています。
災害時にドローンが活用されるケースが増える中でも、課題は多く残されています。当社がこれらの支援を行った経緯から、実際に活動を行ったことで見えた課題や、いつ発生してもおかしくない災害に備えるための課題や体制づくりについてご紹介します。
災害支援目的にドローンで何ができるのかが認知されていない。
まず、危機管理の現場で活躍される方々がドローンで何ができるのかの認知が低いことが挙げられます。1月の能登での震災後は全国からドローン会社が集結し対応したものの、自治体の方々はドローンを活用することで何ができるかを把握されていない様子でした。震災が発生する度にドローン会社が現地に赴くことには限界があるため、自治体で対応できる体制を整えておかないと復旧活動に遅れが生じてしまうことになりかねません。
ドローンで何ができるのか、それは大きく3つが挙げられます。
1つ目は被災状況の調査。これは災害現場において状況を把握するための初動として重要です。そして2つ目が被災者の探索。震災発生後はまず被災者の捜索や人命救助が優先です。しかし、空からでは被災者が見つからない場合もあるので、屋内の運用が可能なドローンで狭い場所で探すことうことも可能です。3つ目は緊急物資輸送。災害現場では水や食料などを自衛隊の方々が人力で運ぶと相当の時間がかかり、かつ危険も伴いますが、ドローンを使えば簡単に物資を輸送することができます。
地震や豪雨や台風などで土砂崩れなどの災害が起こった場合、初動としてどこでどのような被害を受けたかの全体像を迅速に確認することが大切です。ドローンで被害状況を確認する場合、飛行させながら現場の動画をリアルタイムで映像を伝送したり、その動画を各所で共有することもできます。さらに、そのデータを解析して地図や地理情報データに変換するなど、後の復旧作業を担う方々にも共有することでスムーズに復旧作業を進めることも可能です。
また、ドローンで撮影した大量の写真から画像を解析し、オルソ画像の作成や地形データも得ることができます。ドローンが撮影した大量の写真を重ねて解析し、位置データから正確な地形データをPCで解析しデータを作ることができ、震災後の地形の変化も正確に確認することができます。
長距離・広範囲の調査が得意なVTOL型ドローン エアロボウイング
当社は長距離型の飛行機型のドローン「エアロボウイング」を主力製品としており、同機は国内で唯一第二種型式認証を取得した機体で、マルチコプター型のドローンよりも長距離、広範囲飛行できることが特徴です。LTEを搭載しているので遠隔操作が可能で、垂直に離着陸ができるため滑走路がなくても運用できる機体です。
活用例として高速道路や河川巡視など、長距離や広範囲の調査に適しており、山間部や上流のダムから下流までの長距離をワンフライトで飛行し撮影を行うことも可能です。普段から平常時の点検等に利用いただき、災害時にも活用いただけるよう普及を目指しています。
さらに、エアロボウイングは全自動で飛行できることも特徴です。災害が起こった場合自動飛行する経路(フライトプラン)をあらかじめ作成しておき、災害が起きた場合すぐに飛行できる練習や準備をしておくことで、いざ災害が起こった際に迅速に対応できるようになります。いつ発生するかわからない震災に備えるには、普段からドローンを活用しておけるよう準備をしておくことが大切です。
後日公開するレポートの後半では、災害時のドローン活用に関するその他の課題についてご紹介します。